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オクジョウ日記 第一話

 【03//2016】

一週間前、詩織は英輔を連れて路地裏を歩いていた。英輔に渡したチラシには、様々なアーティストの写真が加工されており、どうやら音楽イベントが開かれるようだった。英輔はあまり興味のないジャンルであったが、半ば強制的に引きずられた。会場は、既に満員であり、詩織はその群れを掻い潜って、先頭近くまでやってきた。


「6番目、見て。私はこれを観に来たの」

「・・・スノウラビット?え、なに、ガールズバンド?」

「半分合ってる」

「どういうことですかそれ」


大歓声の中登場したスノウラビットは、まるでお客一人一人に感謝を込めるように、丁寧に頭を下げた。ガールズバントだと思ってみたが、どちらかといえば、過激派のそれに近い風貌に、英輔の戸惑いは隠せなかった。


「今日は、暑いですね。私冷却スプレー持ってきたんですけど、あっという間に空っぽになっちゃいました。テッヘヘヘ」

「テッヘヘヘ~~~~~!!!!!!」

突然の合いの手が入り、いよいよ居心地の悪くなっていく英輔に対し、詩織のまなざしは他とは違う、澄んだものだった。軽い挨拶が終わると、スノウラビットは置いてあったペットボトルを一飲みすると、それを観客席に向け吹き出した。それがかかったものは、あるものは喜び、またあるものはビニール袋を広げ、それを受取ろうとしていた。


「あの、これ何なんですかね詩織さん」

「これが彼女たちの持ち味だからね」

「ド変態サークルのイベントじゃないですよね」

「半分合ってる」

「どういうことですかそれ」


曲が始まった。澄んだ声色とは一線を越えた、俗にいうデスボイスが会場を覆った。あんな小さな体から一体、どの力を放出してるのだろうか。観客もまた、それらを受け入れ熱中しており雰囲気は悪くないのだが、いまいち詩織のノリは良くなかった。英輔は詩織に、本当の目的は?と尋ねると、ボーカルの女性に指をさした。


「あなたの良く知る女性だからね、彼女」


その時には、それがどういう意味だったのか分からなかった。
二曲目に入ってもなお、激しい曲が続く。その時足元から、何か引っ張られる感覚があった。目線を底に移すと、子供の姿があった。きょとんとした表情に一瞬、疑問符ばかりが浮かんだ。


「肩車して!!!」


何故この会場に、こんな小さな女の子がいるのだろう。親と逸れてしまったか。いやしかし、こんな場所に連れてくるだろうか。なお引っ張ってくる少女のお願いを断るのも酷だろう。英輔はなんとか隙間を作り、よっしゃと意気込み少女を持ち上げた。また違う興奮があったのか、とても楽しそうだった。不思議なことに少女は、スノウラビットの曲を口ずさんでいる。何も知らない自分でさえ、リズムに乗ってしまう程に。自然と今起こってしまってる状況を、楽しんでいる自分がいる。その音色に心を奪われていく自分がいる。細かい事は良い、楽しめばいい。スノウラビット、その持ち味を浴び続けたい。すべてを持って行ってくれ、悲しみ全てをこの世界から。いつまでも。





SnapCrab_NoName_2016-8-3_22-0-17_No-00.png




ライブは終了した。途端に疲労が一気に放出されて、へなへなと腰を落としてしまった。少女は英輔を気遣い、頭をポンポンと撫でてくれた。その瞳は、終わってもなお、きらきらと輝いていた。


「おじさん、疲れてるの?」

「・・・あぁ」

「オレンジジュース、飲む?疲れてるの?」

「・・・あぁ、とても疲れてたんだ」


一年という時間は、何も解決などしてくれなかった。こういった虚無感を、どの言葉で片付けたらいいのだろうか。凪との、最後の言葉すら交わせなかった後悔を引きずるのは、自分のためにもならないと自覚をしていた。自然と日常に戻るのだと思っていた。あの日、凪が自殺をしてからの自分の価値観を、えらく疑い、憎んだ。たったあれだけの、生きる希望を失っただけの感情に全てを奪われて、凪は一体自分の事をどう見てたのだろう。自分は、何故死にたいと言ってしまったのだろう。考えがまとまらない一年だった。


「優しいね・・・」


詩織がそういうと、少女はにっこりと笑った。しばらくたって、身支度の終えたスノウラビットが会場外へと現れた。メイクを取った彼女の姿は、どこか幼げを残していた。


「英ちゃん」

「・・・え、あ、あぁスノウラビットのボーカルの。いやぁ凄かったですよライブ!自分あんまり馴染みのない音楽だったんですけどこう、ズズズと入ってきて来る感覚が・・・。あれ?えっと、僕の事をご存じ?」

「英ちゃん!」

「・・・・・・嘘でしょ。まさかでしょ?まさか」

「嘘じゃないよ!今日は来てくれてありがとう!私、未来だよ!」

「み・・・・未来ちゃん!?未来ちゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」

「未来ぅ?」


少女は、よくわからずに首をかしげていた。
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Category: 小説 「幕があく」

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