2017 02 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. »  2017 03

短編 風の電話

 【11//2017】

丘から海が、眺めるからだ。父の足はいつもより、軽やかに見えた。
私に映る景色は、覆われたブルーシートと、何もない平坦な国道沿いの町
車で2時間くらいは走っただろうか。私のような学生は、この街にはいなかった。



「おまえからやるか?」


電話ボックスの前で、父は私に尋ねた。少し悩んで、父さんから先にどうぞと答えた。
いざ目の前に立つと、緊張するのか何度も私のほうを振り返る。
諦めがついたのか、小さなため息をこぼしながら、電話ボックスの扉を開けた。
私はその様子を眺めようか悩んだが、長くなりそうなので、少し周辺を歩くことにした。
丘からは、果てしなく伸びる海が、広大な海が続いていた。








uploaded.jpg






「・・・えぇ、まぁ。元気してるか。元気してたら全然いいんだ。この季節は寒いな。君が編んだ手袋つけてきた。もう10年も前になるかな。まだまだ現役だよ。そっちは、もう春は迎えたか?桜は咲いてるか?にぎやかに酒でも飲んでるか?君はあまりお酒は飲まなかったね。買ってきてくれたワイン、まだ飲んでないんだ。帰ってきたら開けようと思ってるけど、そのままだったら、まだ僕に未練が残ってるみたいで子供がうるさいんだよね。思い出話は尽きないよ。最近じゃあ興味もなくなって、すぐに部屋に戻っちゃってさ。・・・ごめんね。まだ、希望を捨てちゃあいないんだ。まだこの世界のどこかにいるんだろうなってね、明日の朝ぐらいに、ごはん作って待っててくれるんじゃないかって考えるんだ。ディズニーランドの約束は、守ってるよ。家族そろって、行こうって決めたもんね。だから帰ってきなよ。怒らないから帰っておいで。生きてなくてもいいからさ、骨だけでも帰っておいでよ。君のいないお墓に足を運んでも馬鹿らしいじゃないか。馬鹿らしいから、お願いだから。僕は強がりできないよ。・・・返事くらいしてよ。君の声を忘れてしまいそうになるんだ。届いてるなら返事をしてよ」


繋がらない黒電話。おいてあるノートには、ここを訪れた人達の記録が残されていた。
ここに来ると、すべてを認めたような気持になってしまう。諦めているような気持になる。
それでも、あの世があるとしたならば。




「父さん言えた?」

「もう一回入っちゃおうかなぁ~」

「なんだそれ」







「もしもしお母さん。私です和枝です。6年・・・かな。私もう20だよ。20歳になっちゃった。すぐだったね。今年東京に行くことになったよ。東京だよ私。父さん寂しそうだから慰めてあげてね。たまには反応してあげてね。いっつもお母さんの写真見てるんだよ。いい写真がないとか、流されたとか言って。心霊写真とかでもいいから、ベストショット期待してます。見つかってないだけで、私はお母さんが死んじゃったというのはわかってます。理解してます。だから探そうなんていう気持ちはお父さんよりは無いと思います。東北の海は寒いけど、お母さん泳ぐの上手いから、その辺は心配してません。今も泳いでるなら、きっとどこかの無人島でサバイバルでもしてるんだろうけど、たまには肉も食べてください。ふぐは裁かないでください。えっと、なんとか、なんとか今、二人でうまい事生活しています。喧嘩は多くなったけど、嫌いになるなんてことはないので安心してください。これからも、ずっと。6年が、長いと思わないのは、きっとお母さんとの時間がなかったからだと思う。会いたいと思うけど、会うとまだ別れなきゃいけないから、当分先まで待っててください。たぶん父さんが先なので、そちらのほう楽しみにしといてください。今、夕方だけど星見えてきた。あの時空にいたら、みんな助かったのかな。お母さんも死ななかった?星を見るといつも思ってしまいます。えっと、それじゃあね、お母さん。じゃあね」





「言えた?」

「言えた」

「じゃあ、帰るか」

「うん」










潮風に流れた声に、波は、遠く夜空に音を奏でた。




スポンサーサイト

Category: 小説

Comments (0) | Trackbacks (0) | トップへ戻る

卒業おめでとう

 【01//2017】

3年間とは、意識よりも早いスピードで流れ

いつか迎えるこの日すら、もう少し先だと思うところもありました。

なんでだろう。

都会の日々に目が眩んでしまうと、岡山に帰りたくなる。

そして、後輩に会いたくなる。話したくなる。

社会に出ると、楽しいことも嫌なこともすべてを自分の中にしまい込むから

たった一年前のことでさえも、恋しくなって。

演劇部の思い出を語るうえで、後輩4人の存在はなくてはならないから

あの風景から離れていく姿をどうか、寂しい思いを浮かべないようにしていた













SnapCrab_NoName_2016-3-2_20-21-18_No-00.png




2年生の時、6人の新入部員が入りました。

当時部員数が先輩含めて30人近くいたため、今年は大勢はいらないだろうと

宣伝に力を注がなかったことが影響したのか、想像を超える少ない人数

ただ、多く入部してもらうより、早く名前を憶えられたし仲良くもなれ

結果論ですが、この少なさこそがいい関係を築けた理由だったかもしれません。



初めての舞台、初めての練習

ゆきちゃんは当初はおとなしく、あまり大きな声を出せない子でした

何度も注意を受けていましたが、元々舞台用の声と言われても、自分だってよくわからない

声だけじゃない、動きも演劇において重要だからそこを頑張ろうとアドバイスすると

ほかの誰よりも、熱心に練習に励んでくれました。この時点でおじさんは密かにホロリ




ドラックストアの店長役だった私は、その部下役の後輩とよく話をしていました。

まだまだ中学生気分から抜け出せていなかった寛大君と小野君は

よく先輩から叱られていました。小野君のあの先輩を睨む目は未だに憶えてます

ただ、それでも最後まで演技に向かい合い、その独特さを輝かせてくれたことで

私も助けてもらった部分がありました。

小野君の耳のそばで大きな声を出してしまった事は申し訳なかった。張り切っちゃってごめんね。



まなちゃんも、初舞台の冒頭でいきなりハードな台詞を任されてましたね

さすがの自分でも初舞台で妊娠検査薬が云々と真顔で演技できません

当初から演技がずば抜けて上手かった記憶がありました。先輩みんな震えてました。




およそ半年間、「男でしょ」という舞台に費やしたのは今でも鮮明に覚えてます

まさか自分たちが遥か島根の地へ向かうことになるなど想像もなかったので

時期が学校行事と重なってたこともあり、女子と練習する機会が減ってきて

やむなく私が女子役で練習することも多かったですね

終盤の大乱闘シーンは、あそこも100回はゆうに超える練習をして

そのたびそのたびに、寛大君はビンタを喰らい

女子生徒役の私からもビンタを喰らい

鼻血を流し

完全にいじめのソレなんですが、なんとか半年間耐え抜いたことは、素晴らしいとしか言えない

さえない生徒役のパイセンも、学校じゃあろくでもない悪ガキだったのに

課題をきちんと約束通り済ませて部活に来てくれました

褒めることではないですが、主役として懸命に頑張っている姿は素直に応援しましたし

徐々にキレのよくなる掃除や表情には、またしてもホロリしてしまいました。



私が作ったオクジョウ日記、英輔役の寛大君はまたしてもビンタを受け

主役のパイセンも、私の想像にあったキャラ像とシンクロした演技をしてくれて

舞台袖から、何度も何度も鳥肌になってしまいました。

まなちゃんの激越した演技は、褒めてくれた大人の方も多く

これにはさすがに私の想像を超えてしまっていた部分もある位

人生において自らの作品がこのようにして作品になる事は貴重な経験でした

それを更に彩強く表現してくれた後輩には、言い尽くせない感謝であふれています。












プライベートでも、よく後輩4人と遊ぶ機会が多かったように思います。

クレヨンしんちゃんの映画を、4人と共に見に行ったことがありました

一人だけ先輩で浮いてない?と尋ねると

先輩はお父さんなので、面倒見るかかりなので大変ですよと言われました

そのとき、なんだか分からない優越感、高揚感に包まれてしまい

俺は父親、俺はこの子たちの親父・・・と若干面倒くさい事を考えてたりしましたね

それだけ慕ってくれた事には、これまでの日々に報いる幸せなのかなと考えたり

これから先も、この4人とは繋がっていたいと思えるようになりました。

カラオケに行ったり、ごはん食べたり、遊びに出かけたり

それは先輩後輩よりかは仲の良い友達のようにも感じる時がありました

でも先輩は先輩だし、後輩は後輩という意識は常にあり

それ以上の関係等は、想像もしませんでした。















最後、4人が揃う姿が見れなかったのはとても残念です。

思う気持ちが強かったために、私自らも余計なことをしたなという気持ちはあります

部内の枠組みを超えた事に対し、それは第三者である私はかかわってはいけないことで

しかし当時の残していたビデオを再生すると、4人が映っていたりして

それを懐かしいものと捉えるのが、なんだか自分を納得させてるように感じ

せめての、先輩としての立場からの願いが叶わなかったのは、寂しいものです。





寛大君、パイセン、まなちゃん、ゆきちゃん

4人との思い出話は尽きることはありません

それぞれに素敵で魅力があって、個性的な4人でした

とても大好きな後輩たちでした

卒業式を迎え、緊張した面持ちで体育館を後にする姿を見ていると

3年前の春を思い出し涙を流してしまうのであまり考えないようにしました

心身共に成長し、身長はあまり変わらない男もいましたが

変わらない部分はそのままで、しっかりと前に進んでいるように見えました。

最後、後輩たちからのメッセージを聞いていると

常に楽しいパイセン、かわいいとまで言われる寛大君

私の知らない時間に、これほどに後輩たちに愛されていたんだなぁと

それがとても嬉しかった。

3年間、きっと楽しい時間を過ごせたんじゃないでしょうか。






私のいた三年間、時につらい経験や悲しい出来事もありました

後輩に悩みを打ち明けたり、共に苦楽を過ごしたこともありました

パイセンにマジ切れした事もありました

思い出は、遠く遠くになるたびに

それが人生の糧だったと気づくこともあります

社会に出れば、もっと多くの、辛い事に直面します

演劇部は、そんな疲れた心を癒してくれる場所でした

辛くなったら、たまに顔を見せに行ってあげてください。

変わらない姿を見せてあげてください

私は君たちに会うと、いつもワクワクしてしまってしょうがないのです

この先も、いろんな場面で、いろんな思い出を作っていこう

みんなのことが大好きです。




卒業、おめでとう。



Category: 高校生活

Comments (0) | Trackbacks (0) | トップへ戻る

プロフィール

ゴブリン

Author:ゴブリン
ブログをはじめ早4年
たまにマニアックな記事を書くこともありますw

興味のあるもの
 ・ウルトラマン、ゴジラ、ガメラ等の怪獣特撮全般
 ・検索してはいけない言葉
 ・世界観のある音楽(galileo galilei等)
 ・旅 (主に建造物や景色がいい場所に足を運ぶ)
 ・小説 (将来は作家希望だったり?)
 ・クレヨンしんちゃん&ドラえもん
 ・ジャンプ連載作品
 ・演劇 (高校では演劇部所属)

まだ乏しい身ですが、応援のほどよろしくお願いします
  

ツイッターやってます。フォローよろしくお願いします

https://twitter.com/goburingikon

カテゴリ

おしゃべりtime

フリー掲示板

jj

現在の閲覧者数:

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
趣味・実用
961位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
198位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
趣味・実用
961位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
198位
アクセスランキングを見る>>

フリーエリア

HTML

カテゴリ

ブロとも申請フォーム

いえい

QLOOKアクセス解析